劣等感が強い

劣等感が強い人の特徴・心理・対処法

劣等感が強い

劣等感はだれでもが持っているものなので、劣等感があるというだけでは特に大きな問題は生じないでしょう。

しかし極度に強い劣等感があると、それが原因で人間関係がうまくいかないこともあります。

特に職場に劣等感が強い人がいると、人間関係だけでなく行動にも現れるので仕事にも差し支えるでしょう。

また、あなたがもし劣等感が強いという自覚があれば、早めにその劣等感を克服することをおすすめします。

今回は劣等感が強い人の特徴や心理、対処方法、克服方法について解説します。

劣等感とは

「劣等感」は日本ではコンプレックスという呼び方をすることもありますが、これは和製英語であって英語では違う意味になってしまいます。

劣等感を英訳すると、「Inferiority Complex」または、「Inferiority」だけとなり、Complexだけでは「複合」という全く違う意味になります。

一方で劣等感と反対の意味の優越感も「Priority Complex」なので、コンプレックスだけで劣等感という意味を持たせているのは日本だけということになります。

心理学用語にはコンプレックスという言葉がありますが、「無意識下に抑圧・固着され、ときに強い感情を誘発する観念の複合体」という意味で使われています。

つまりコンプレックスという言葉には劣等感も含まれますが、同時に優越感も含まれるので、劣等感という意味で使うのは間違った使い方です。

「劣等感」は「自分が他人よりも劣っている感情」のことを言います。

この劣等感は悪いものではなく、劣等感をモチベーションにして物事を成し遂げたり、成果を上げたりということもあります。

ただし。あまり劣等感を強く意識しすぎると、他人とのコミュニケーションなどに支障をきたすこともあります。

劣等感が強い人の特徴・心理

劣等感が強い人にはどんな特徴や心理があるのか考えてみましょう。

子供の頃からの環境が影響している

劣等感が強い人は子供の頃に親や周囲のおとなから「お前はダメだ」「お前はバカだ」というように、けなされて育ってきた可能性があります。

こうした環境の中で育つと、おとなになっても劣等感が強い人になりやすいのはだれが考えても明らかです。

ダメな人間だと言われ続けることで、劣等感を植え付けられたということは十分に考えられます。

他人と比較する

劣等感が強い人は他人と比較する癖がついているという特徴があります。

他人よりも劣っているという感情はだれかと比較したときに感じるものです。

もし世の中に自分一人しかいなければ、比較する対象がないので劣等感はもちろん優越感も感じることはないでしょう。

劣等感が強い人は無意識のうちにだれかと比較してしまい、自分がその人よりも劣っていると強く感じてしまうのです。

反対に子供を褒めて育てると劣等感を感じることも少なくなるので、良い教育方法のような気がします。

しかし褒めすぎても今度は褒められないとモチベーションが上がらないという弊害が生じます。

反対に劣等感があることでモチベーションが高くなるという意味では、劣等感そのものが悪いわけではないのです。

劣等感が強すぎることが問題なのです。

理想の自分と比較する

劣等感が強い人は優秀な人と自分を比較しますが、もうひとつ理想の自分と比較するという特徴もあります。

劣等感があるため理想的な自分を心の中で作り上げているのですが、当然理想なのでかなり高い水準の人物像となります。

つまり現実的には理想の自分になれる可能性が低いので、その理想像と自分を比較して常に劣等感にさいなまれることになります。

これではまだ現実に存在している優秀な人を目指すほうが現実的と言えるでしょう。

この自分の理想像は「むしろ劣等感を高める原因にしかなりません。

他人の優れた点に目がいく

劣等感が強い人は他人の良い点にしか目がいきません。

これ自体は悪いことではありませんが、すべてにおいて完ぺきな人はこの世に存在しません。

つまりどんなに優秀な人にも欠点は必ずあるということです。

しかし劣等感の強い人はその欠点には目がいかずに、優秀な点だけを自分と比較して劣等感を強めているのです。

心理学ではハロー効果と呼んでいるようですが、ひとつの優秀な評価に全体的な評価が引きずられてしまい、全体的に高い評価となってしまっているのです。

劣等感の強い人は人の優秀な点を見抜く能力は高いのですが、欠点を見抜く力が弱すぎるとも言えます。

自分に対する評価が低すぎる

劣等感が強い人は他人の優秀な点だけを見るという特徴がありますが、同時に自分の評価を低く見るという特徴もあるので、よけいに優秀な人と自分との差が大きくなります。

また、自分にないものを他人が持っているというだけで、自分に対する評価を低くする傾向があります。

人はすべてにおいて優秀であることはありえませんが、劣等感が強い人の中にある理想的な自分は完璧に近い姿なのかもしれません。

こうした、いわば自分に対して厳しく判断するという点は、むしろ利点と言えるでしょう。

自分の欠点を他人に投影する

劣等感が強い人は自分が劣等感を抱いていることを、まるで他人ができていないかのように叱責することがあります。

ここでいう他人とは自分よりも弱い立場にある人に対してという意味です。

これは心理学用語で「投影」と呼ばれている行動です。

「投影」は自分が劣等感を抱いていることを認めたくないために、他の人にそれを押し付けてしまう行動のことです。

劣等感が強い人ほどこの投影という現象が起きやすいのです。

嫉妬心も強い

劣等感の強い人は他人をより優秀だと判断し、自分をより低く評価する傾向があります。

そのため他人に対して自分ではかなわないほどの優秀な評価をします。

そのことが他人に対して強い嫉妬心を抱かせることにつながることになります。

そしてその嫉妬心がより劣等感を強くするという悪循環に陥ってしまうのです。

自分を認められない

劣等感の強い人は自分に対する評価を低くしますが、それ以前に自分をまったくダメな人間として正当に認めることができません。

劣等感が強い人の根底にあるのは、この自分を認められないという気持ちです。

この気持ちを持ち続ける限り、強い劣等感からは抜け出すことができません。

ストレスを抱え続けている

強い劣等感を持つ原因のひとつにストレスを長い間抱えているということがあります。

学生時代から競争をし続けて、社会人になってからも競争をしていることが多い現代人にとっては、生きていくだけでストレスを強く感じています。

ストレスが強いと競争に負けたときに自分に対する失望感も大きくなってしまいます。

劣等感が強い人はただでさえ、他人と比較する傾向にあるので、ストレスを抱えやすい傾向にあるのです。

過去の環境

劣等感が強い人に共通している特徴として、子供の頃に親や教師から褒めてもらえなかった環境だったという点があります。

つまり努力が正しく評価されずに、より高い目標を与えられていたと考えられます。

本来ならば、自分ができる範囲で目標を達成すれば褒められて、より高い目標に向かうというのが理想です。

褒められることなく高い目標だけを与え続けられると、自分は何をやってもダメな人間だと思うようになっても不思議ではありません。

こうした過去の環境が強い劣等感を持つ人を作った可能性が高いのです。

劣等感が強い人の対処方法

職場にいる劣等感が強い人にはどのように接したらいいのでしょうか?

劣等感が強い人の対処方法について考えてみます。

相手を責めない

劣等感が強い人は極度に自分を低く評価する傾向があります。

そんな人にミスや失敗を責めるような言い方をすると、自分に実力や能力がないためだということを強く感じてしまいます。

相手を攻めるつもりがなく軽く言ったつもりでも、劣等感が強い人は思った以上に深刻に受けとめてしまい落ち込みます。

そのため劣等感が強い人に対しては口調に気をつけて、直接的表現するのではなくワンクッションをおくように心がけましょう。

特に職場の部下が劣等感の強い人の場合は、その点に気をつけて指導やフォローをするといいでしょう。

相手に引きずられない

劣等感が強い人は自分を極度に低く評価するというマイナス思考を持っているという特徴があります。

この「自分なんてダメな人間だ」と考えるマイナスのオーラをまともに受けてしまうと、相手をしている人も影響を受けてストレスを貯めることになります。

そこまでいかなくても劣等感が強い人の否定的な発言を聞いているだけでも気分が落ち込むことになります。

そのため劣等感が強い人と接するときはこのマイナス思考の影響を受けないようにすることが大切です。

具体的には相手のマイナスな発言はそのまま受け取らずに、軽く受け流すようにしましょう。

さらにできれば否定的な話題から、明るい肯定的な話題に切り替えられればベストです。

相手を褒める

劣等感が強い人は自分をダメな人間だと思っています。

そのためそんな人と会話する場合はなるべく相手を褒めるようにしてみましょう。

褒める内容はそれほど難しく考えなくても、簡単なことを褒めてやるだけで劣等感が強い人には大きな効果があります。

こうして褒めることを続けていけば、劣等感が強い人も次第にマイナス思考が改善されている可能性が高まります。

励ましは無意味

劣等感の強い人に対して励ましの言葉をかけても、上辺だけの言葉と受け取られるのであまり意味はありません。

それよりも日常的に接しなければいけない場合は、会話の中に感謝の言葉や褒める言葉を交えてみましょう。

すごいね、ありがとうといった簡単な言葉だけでも、日常的に聞くことができると劣等感の強い人も次第に自身を持てるようになります。

特に感謝やお礼の言葉は劣等感が強い人にも心に響く言葉です。

劣等感が強くなった原因のひとつに子供の頃に褒められることがほとんどなかったという点があります。

まして感謝されるという経験も少ないので、日常的にお礼や感謝をされるという経験は今までなかったはずです。

そのため何気ない感謝の言葉でも心に響いて、大きなプラス効果が期待できるのです。

はっきりとマイナス思考を否定する

劣等感が強い人は自分を過小評価しすぎる特徴があります。

そのため褒めることも効果がありますが、自己評価が低すぎるという点やマイナス思考が多すぎるという点をはっきりと相手に伝えることも必要です。

特に職場の部下であれば軽く叱責することで相手のマイナス思考を切り替えるきっかけを作ってあげましょう。

うまく言ったときは褒めてマイナス思考がひどいときは叱責するというようにアメとムチを使い分けることが、劣等感が強い性格を矯正するきっかけになるでしょう。

劣等感が強い性格を直す方法

劣等感が強いと感じている人はどのようにしてその性格を克服したらいいのでしょうか?

最後に劣等感が強い性格を直す方法を考えてみましょう。

劣等感を肯定する

劣等感は必ずしも悪いことではありません。

少なくても自分自身の劣っている部分を客観的に認識するのは重要なことです。

何が他人と比べて劣っているのかがわかれば、それを直すことができるからです。

自分の劣っている部分がわからないままでは成長することはできません。

しかし劣等感が強い人は自分が他人と比べて劣っているのは悪いことだと決めつけています。

そうではなく劣っている部分がはっきりしていることを良いことだと認識するようにしましょう。

その上で改善策を考えることで、マイナス思考からプラス思考に切り替えることができます。

自分の良い点をリストアップする

人間は頭の中だけで考えていると、堂々巡りになってしまい自分の悪いことを考えると際限なくマイナス思考に落ちてしまいます。

そこで一度自分のプラス面を書き出してみましょう。

どんな些細なことでもいいので文字にすることが大切です。

たとえば今までマイナスだと考えていたことも、プラスとして考えてみて良い点としてリストアップしましょう。

具体的には「消極的な性格」がマイナスだと考えるのであれば、それを「慎重な性格」として捉えてプラス評価してみるのです。

そうして良い点をリストアップすると思った以上に良いところをリストアップすることができます。

頭だけで考えるのではなく文字として書き出して目で見て認識し、言葉にすることで耳からも情報をインプットしましょう。

これをやってみるとマイナス思考を改善するきっかけになるでしょう。

自分と他人は別だと考える

劣等感が強い人の特徴は自分を他人と比較してしまうという点にあります。

この思考を一度切り替えて、自分と他人はまったく違う存在なので、比較しても意味がないと考えましょう。

実際に人はそれぞれに違う能力を持って違う性格をしている別個の存在です。

世の中に違う人が存在しているのは、それぞれで違う役割を持っているからで、すべての点で他人よりも優れている必要はないのです。

そう考えると比較自体がまったく無意味であることに気がつくでしょう。

劣等感が強くなったのは他人や理想の自分と比較してばかりいるからです。

この考え方を変えると劣等感が強い性格を大きく変えることができますよ。

まとめ

劣等感が強い人は自分を何かと比較してしまうという根本的な問題を抱えています。

これは子供時代の経験や環境が大きく影響しているのでしょう。

この考え方を簡単に変えることは難しいですが、反対に考えると、考え方を変えるだけで劣等感が強いことは簡単に克服することができます。

職場に劣等感が強い人がいるときは、この点を考えて他人と比較することは意味がないということを伝えてあげてください。

この記事が劣等感の強い性格の克服や、職場の劣等感が強い人への対処に役立てれば幸いです。