相手に大きな要求を通すフット・イン・ザ・ドア・テクニックとは

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あなたは他人から頼み事をされれば、嫌とは言えず何でも引き受けてしまう方ですか?

一度頼み事を引き受けると、相手の巧みな話術に引っかかってその後もずっと頼まれる事ってありませんか?

断りたくても断れないのは中々のストレスになります。

職場の人間関係は最も重要です。

たとえ好きな業種であっても人間関係がうまくいかなければ、限度もありますし、仕事にも影響が出てきます。

日常に潜んでいるフット・イン・ザ・ドア・テクニック法を知ってうまく対処していきましょう。

フット・イン・ザ・ドア・テクニックとは

頼み事を一度引き受けてしまうと、次から断りづらいといった経験はありませんか?

フット・イン・ザ・ドア・テクニックとは、この人間の心理をうまく利用した交渉テクニックになります。

『段階的要請法』と言った方がすぐにおわかりいただけるでしょう。

ハードルが低い要求から積み上げていくことで、最後には難易度が高い要求でもすんなりと相手の承諾を引き出すことができます。

フット・イン・ザ・ドア・テクニックの語源

フット・イン・ザ・ドア・テクニック(Foot in the door technic)を直訳すると「ドアの中に足を入れる技術」になります。

もともとは訪問販売のセールスマンが使っていた営業テクニックで、片足を玄関のドアの前へ一歩踏み出してセールスをしていたことからこの名前が付けられました。

たいていのお客さんは不意にセールスマンが来ても門前払いをしようとします。

そこでセールスマンは「少しでいいから話を聞いてください」と言って、わずかに開いたドアにつま先を挟むことから始めます。

次に訪問宅に上がり込んでじっくりと話を聞いてもらい、最終的に商品を売ることができれば成功です。

このように最初に小さな要求を相手にのませることをきっかけにして、本命である大きな要求をかなえようというのがフット・イン・ザ・ドア・テクニックになります。

フット・イン・ザ・ドア手法を持ちいるシーン

・お金の貸し借りなど金銭絡み

・商談から契約に至るまで

・恋愛に発展するまでの駆け引き

・販売員の営業トーク

フット・イン・ザ・ドア・テクニックの効果の実証

1966年にスタンフォード大学社会心理学者であるスコット・フレーザーとジョナサン・フリードマンによってフット・イン・ザ・ドア・テクニックの効果を示す実験が行われました。

その実験内容とは以下の通りです。

「住民の交通安全意識を高める」というキャンペーン活動を行う人たちをAとBの二つのグループに分けて、それぞれカリフォルニア州の住民宅へ戸別訪問をして回ります。

Aのグループは「安全運転をしよう」と書かれた小さなステッカーを車のフロントガラスか家の窓に貼って欲しいと家主に依頼します。

特に負担なく受け入れられる依頼です。

その依頼を受け入れてくれた住民宅へ2週間後に再度訪問し、今度は景観を損なうような下手な字で「安全運転をしよう」と書かれた大きな看板を自宅の庭に立てさせてほしいとお願いをしました。

前回の依頼と比べると、あまり受け入れたくない依頼ですが、76%の住民が承諾しました。

一方、Bのグループは、最初から大きな看板を庭に立てるように依頼したところ、17%の住民しか承諾しませんでした。

この二つのグループの結果から、いきなり大きなお願いをするよりも、先に小さなお願いを承諾させたあとに大きなお願いをしたほうが、その承諾率が高くなることが明らかになりました。

フット・イン・ザ・ドア・テクニックが効果的な理由

人は他人からよく思われたいので、自分の考えは一貫したものにしたいという気持ちが働きます。

この心理を「一貫性の原理」と言います。

※一貫した考えを持つ人は「筋が通っている」「信念を曲げない」「信頼できる」などと高い評価を受けます。

反対に考えがコロコロ変わる人は「気まぐれ」「優柔不断」「信用できない」という悪い評価を受けることは分かりますよね。

先ほどの小さいステッカーを貼る依頼に承諾した人は、承諾したことで「自分は交通安全に協力する公共心がある人間だ」という意識が芽生えました。

そのため公共心に訴えるさらに大きな依頼を受けた場合でも、依頼を受け入れやすくなっていたというわけです。

フット・イン・ザ・ドア・テクニックの実用例

子供に家事のお手伝いをさせたい場合

母:「食べた後の食器を台所に持って行ってくれない。」
子供は持って行くだけならと承諾します。

母:「家庭科の授業では食器洗いまでが食事だよ。できるかな?」
すると子供は「洗うくらいできるしっ!」とムキになって食器を洗います。

母:たとえ洗い残しがあったとしても「きれいに洗えているじゃない、ありがとう。これでバッチリだね」と褒めます。

子供に「勉強しろ勉強しろ」と強要してもほとんどのお子さんは嫌気が指してきたり、やる気がなくなるのは大人も同じです。

絶対に禁句ワードです。

「夜、勉強してたらお腹すかない?夜食でも作ろうか?何時がいい?」と誘導尋問するのです。

休憩も必要です。楽しみが出来てやる気が出そうですね。

友達からお金を借りたい場合

あなた:「相談したいことがあるんだけど話を聞いてもらっていい?」
友達は話を聞くだけならいいかと承諾します。

あなた:「今、金欠で苦しいんだ。月末に返すから5000円貸してほしい。」
友達は5000円ならいいかと承諾します。

あなた:「5000円では足りないかもしれないんだけど、いくらまでなら貸せる?」
と逆に貸してもらう事を前提に金額を問う。
友達は一度承諾した手前、お金に困っている事を知っているので許容範囲内でお金を貸す事になる。

ショップの店員がお客さんにセールスをする場合

店員:「どのような服をお探しでしょうか?」
お客さん:「〇〇を探しています。」

店員:(服を持ってきて)「こちらの服はいかがでしょうか?」
お客さん:「いいですね。」

店員:「良かったら試着してみませんか?」
お客さん:「せっかくなので試着します。」
お客さん:「少しサイズがきついです」

店員:「サイズ違いもございますので、お持ちいたします」
お客さん:「何だか色が似合わない気がする..」
店員:「色違いもございます何色がいいですか?」

店員:「お持ちいたしました」
店員:「よく似合いですよ。今なら20%オフでございます。このままお買い求めされますか?」
お客さんはここまで来ると断る雰囲気ではなくなっています。

食品売り場で試食品を提供する販売員

店員:「おいしいウィンナーをどうぞ食べてみませんか?」
お客さんは無料なので食べる。

店員:「こちらが今食べた商品でございます」と差し出される。「一袋いかがですか?今なら二袋でまとめ値引きいたします」
お客さんは無料で食べたので断りにくい。「(二袋もいらないけど)じゃあとりあえず一袋..」

中には大人は「味がイマイチ..」と嘘を付いて買わないこともできますが、子どもは正直なので「美味しい」と言われればついつい買う羽目になるでしょう。

好きな人をデートに誘う場合

あなた:「〇〇さんは映画鑑賞が趣味だと言ってましたよね?」
好きな人:「はい、そうです。」

あなた:「これから見たい映画とかありますか?」
好きな人:「■■を見たいと思っています。」

あなた:「ちょうどその映画のチケットを二人分手に入れたのですが、一緒に見に行きませんか?」
好きな人は見たいと言ったため断れない。

募金をお願いする場合

ボランティア:「恵まれない子供たちのために署名をお願いします。」
相手:名前や住所などを書くだけなので受け入れやすい。書いていくうちに署名欄に金額を記入する欄があることに気づく。

ボランティア:「恵まれない子供たちのために募金をお願いします。」
相手は署名をしたため断りにくい。

フット・イン・ザ・ドア・テクニックの注意点

最初の要求は簡単なものにする

フット・イン・ザ・ドア・テクニックは、最初の要求を断られると、次の要求につなげることができなくなります。

ですから最初に行う要求は、相手が必ず承諾してくれそうな小さな要求にする必要があります。

要求は段階的に大きくする

最初の要求と次の要求の度合いが大きいと失敗しやすくなります。

例えば「100円貸して」と言って相手が承諾したあとに「やっぱり1万円貸して」とお願いしても承諾しがたいことは分かるでしょう。

要求は少しづつ大きくしていくことがポイントです。

要求には関連性を持たせる

一連の要求は関連性を持たせたほうが承諾率が高くなります。

要は自然な流れになるように配慮することです。

要求が承諾されたらすぐ感謝の気持ちを伝える

「ありがとう」「助かります」とお礼の言葉を言うことで相手の承認要求を満たすことができます。

相手は依頼者に好意を持ち、要求そのものにも関心を持つので、次の要求にも応じてもらいやすくなります。

フット・イン・ザ・ドア・テクニックへの対処法

相手がフット・イン・ザ・ドア・テクニックを使ってきた場合は、気づかないうちに相手のペースに飲まれて、大きな買い物をしたり、大きな負担を強いられることにもなりかねません。

フット・イン・ザ・ドア・テクニックにハマらないように対策を講じる必要があります。

一番いいのは最初の要求を断ることです。

どんなに些細な要求でも興味がない場合は断りましょう。

フット・イン・ザ・ドア・テクニックは最初の小さな要求を足掛かりにして大きな要求へとつなげます。

最初の要求を断れば、相手は次の要求をすることができません。

しかし、相手が友達であったり、お世話になった人の場合は、小さな要求でもすべて断っていると人間関係にヒビが入るため現実的ではありません。

そこで2つ目の対策は「ここまでは受け入れる。ここからは断る。」と自分の中で明確な線引きをすることです。

例えば、「友達にお金を貸すのは5000円まで」などと前もって決めておくと、相手のフット・イン・ザ・ドア・テクニックに流されずに対処できるようになります。

また、小さな要求と大きな要求はまったくの別物として考えることも効果的です。

「これはコレ、それはソレ。」と割り切るのです。

そうすれば最初の要求に応じてしまったとしても、次の要求をハッキリと断ることができます。

フット・イン・ザ・ドア・テクニック法が効かない?

中には効果が見られない人もいます。

・自分の強い意志を持っている

・できるできないをハッキリ言う

・同業者である

この手のタイプは芯を曲げることがないですから、逆に不信感を与えるだけで効果はありません。

フット・イン・ザ・ドア・テクニックを自分に使う

やらなければいけないことがあるけど気が重いというときは、自分にフット・イン・ザ・ドア・テクニックをかけると効果的です。

例えば、勉強しなければいけないとき

「とりあえず10分だけ勉強しよう。」

と思えば、心理的な負担が軽くなるため始めやすくなります。

いったん取り掛かるとやる気が出るため20分、30分と続けることができます。

ぜひお試しください。

ドア・イン・ザ・フェイス(DOOR IN THE FACE)

小さい要求からだんだん大きくしていくフット・イン・ザ・ドア・テクニック法があればその反対、

大きい要求からだんだんと小さくして要求を断りづらくするドア・イン・ザ・フェイス法もあります。

前の職場の上司がそうでした。

「今日2時間残業できないか?」「申し訳ありません、今日は所用がありまして..」

「1時間だけでもできないか?お願いだ頼む。明日一杯おごるから」「じゃあ、1時間だけなら..」と渋々承諾しました。

それから週に1回1時間残業が、週に2回、3回となるようになりました。

「今日はできません」と言っても「30分だけでいいんだ」と言われその後も〆のデータ管理は私が担当になり、30分の残業は当たり前のようになりストレスを感じていました。

最初は2時間も?!と思いましたが、1時間に減って少しホッとして、その後30分になった時は2時間に比べれば..という気持ちになっていました。

半年後、新入社員が入ってきたおかげで残業はなくなりましたが。

相手は受け入れられそうもない大きな要求だと承知済みでお願いしくるのです。

このように何回も要求を断る事による罪悪感と当初の要求に比べればマシだと思い込んで引き受けてしまう話術に見事に引っ掛かりました。

まとめ

仕事や恋愛などに潜んでいるフット・イン・ザ・ドア・テクニック法ですが、本来なら抱かなくてもいい罪悪感に惑わされず、自分の意思はしっかり持つ事も大切です。